2019/03/28 16:54
最近話題の鉄のフライパンです。
九雲では、打ち出し製法といって1枚の鉄板を叩いて丸くして作っています。
鉄のフライパンといっても、実は色々なタイプがあるのをご存知ですか?
今回は、主な加工法を紹介しながら説明していこうと思います。
◆黒皮鉄
九雲でも使用している黒皮鉄という、鉄の表面に酸化皮膜を発生させ黒くすることによりサビに強くする製法による鉄素材です。
ただ、酸化皮膜を完全ではなく湿気などによりサビてしまう為、油をなじませてよりサビに強くすることが必要です。
使い込んでいけば油と熱により完全な皮膜が出来て、焦げ付きにくい素晴らしい道具になります。
鉄分が自然に摂取できるのも、この素材の特徴ですね。
黒皮鉄にも、出荷時にニスやラッカーなどのサビ止めコーティングしたものと無いものがあります。
錆止めコーティングは、問屋さん流通が主体の時代に問屋さんの倉庫で出荷を待つ間にサビないようにサビ止めとして塗られてきました。
鉄のフライパンを購入したら空焼きしないといけないと考えられてるのは錆止めコーティングのイメージですね。
いまでも大多数の鉄フライパンには錆止めコーティングが塗られています。
◆窒化加工
近年増えてきているサビない加工方法。
鉄に窒素を含ませ焼付し表面硬化をさせたものになります。これの加工の素晴らしいのは、全然サビません!!
試しに毎回濡れたまま乾かさず放置していてもサビたことが一度もありませんでした。
じゃあ窒化加工が1番良いじゃないかと思うかもしれませんが、当然難点もあります。
表面を硬化させたことにより、油が馴染みにくい傾向にあります。
なので、購入してから大量の油を入れて煮ないと、なかなか思い通りの焦げ付かないフライパンになってくれません。
でも、テフロンが剥がれて嫌になり鉄が欲しいって思っている人には入門編として良いのじゃないでしょうか?
◆シリコンコーティング
鉄の表面にシリコン塗装をして、焦げ付きにくくてサビにくいフライパンにする加工です。
なんとなくお気づきでしょうけど、当然シリコンは剥がれてきます。
せっかく長く使えると思って鉄のフライパンにしたのに、テフロンみたいに剥がれちゃうんです。
しかも、剥がれた部分と残っている部分で温度差が出来てしまい焦げ付きやすくなってしまいます。
安価なものに多いのですが、熱伝導率や手軽さを考えての事と信じてます。
◆鋳物
ドロドロに溶けた鉄を鋳型という型に流し込んで作る、もっとも古い製法だと思います。
南部鉄器やスキレットがこの製法で作られている代表的な商品だと思います。
分厚くて重い商品が多いですが、ステーキやハンバーグを焼くには最適かと思います。
最近はダクタイル鋳鉄といって軽い鋳物の商品も増えてきてますよ。じゃあ鋳物じゃなくていいじゃんと思いますが。
真っ黒でいかにも鉄そのままって感じですが、鉄はもともとシルバーです。
鋳物も出来たときにはシルバー色なんです、そしてすっごくサビます。
なので、鉄粉塗装という塗装をしています。
体には何も害は無いですが、購入後シーズニングという油をなじませる儀式が必要です。
そのままオーブンにいれたり、汁気の多いソースがある料理にも良いですね。

鉄のフライパンには、鉄のハンドルと鉄じゃないハンドルの2タイプがあります。
昔ながらの鉄のフライパンは、鉄のハンドルってイメージがあるかと思います。
最近は、鉄のハンドルじゃないのも増えましたが
ちょっと前までは鉄のハンドルがほとんどでした。
熱くて使いづらいのになんで鉄ハンドルなの?って思うでしょ?
それは、一般家庭でほとんど鉄フライパンが使われなくなったからなんです。
料理屋さんのガスコンロって家庭用のガスコンロと比べ物にならないくら強火なんです。
もし鉄ハンドルじゃなかったら、すぐに燃えるか溶けるかしちゃって使い物になりません。
いろんなメーカーさんも飲食店向けに作るので必然的に鉄のハンドルばかりになったんですね。
たしかに燃えないし耐久性ありますが、家庭で使うには無用の長物です。じっさいハンドルも長いしね。

さて、ここからは皆さんが気になるお手入れの話し
3つのポイントに分けて、素材の違いによる点も含めて説明していきます。
◆使い始めの手順をしよう!
・黒皮鉄
錆止めあり:空焼きをします。最近のガスコンロはセンサーが付いているのが多いので、その場合はガスコンロを使いましょう。
感知器が作動するかもしれないので換気扇と窓は開けておいてくださいね。
表面が白っぽくなるまで熱してください。中華鍋ですと全体的に熱するのが大変なので位置を替えながら熱すると良いと思います。そして冷めてから、たわしでキレイに洗ってください。
この時は、すごくサビやすくなってます。洗ったらすぐ油慣らしに入りましょう。
錆止めなし:九雲のフライパンはこのタイプです。まずは洗剤でキレイに洗ってください。黒い鉄粉が結構付いてます。
汚れが落ちたら、水かお湯で洗います。そのまま油馴染みさせましょう。
油馴染みは、煙がでるくらい温めたら少し多めの油を入れて、クズ野菜orもやしなんかを炒めてください。
このときの感じが、いつも使用するときの感じなので覚えておいてくださいね。
・窒化加工:空焼きは不要です。まずは洗剤で洗って乾かしてから、油をフライパンの1/3くらいまでたっぷり入れてください。
そのまま10分ほど弱火で熱してください。油は再利用可能ですのでオイルポットに入れてあげてください。
・シリコン:やることは特にないです。かるく洗ってから使ってください。
・鋳物 :まずキッチンペーパーなどで油を隅々まで塗ってください。ここで1回煙が出るまで熱します。
冷めたらもう1回油を塗ってクズ野菜を炒めます。油を追加しながらしっかり炒めてください。
中の野菜を捨てたら、30分くらい空焼きしてください。これは儀式です。面倒くさがらないでください。
注意点 全てに共通ですが、タワシといったら亀の子タワシみたいな棕櫚たわしの事です。金属タワシはダメですよ。
◆料理をしよう!
・黒皮鉄 :煙が出るまで熱します。これは毎回やりますよ。煙が出てきたら危ないから火を止めてください。
火を止めたら適量の油を入れて、フライパンを少し回して馴染ませます。そしたら火を付けて食材を入れてください。
火加減は、厚みにもよりますがテフロンより弱めで使う方が最初のうちは良いです。
・窒化加工:フライパンを熱します。1/3カップほどの油を投入します。フライパンを回しながら馴染ませます。
油を一度ポットに戻してから、料理にあった量の油を入れてください。
・シリコン:煙が出るまでじゃないですけど適度に熱します。油を入れます。ほとんどテフロン感覚です。
・鋳物:煙が出るまで熱したら油を適量入れます。お肉なら牛脂ですね。あとは黒皮鉄と一緒です。
鋳物は厚みがあるものがほとんどですので、ゆっくり火を通すイメージの火加減がいいでしょう。
◆お片付けをしよう!
・黒皮鉄 :調理が終わったら、少し冷めたくらいで洗いましょう。基本的には洗剤を使いません。
水かぬるま湯とタワシorスポンジのザラザラした方で洗ってあげましょう。調理のさいに焦がしてなかったら、この時点でほとんどスルッと汚れは落ちてます。そしたら火にかけて水分を飛ばしてください。
布巾でふくだけだと湿気が残ってサビます。
洗わずキッチンペーパーでふくだけだと汚いし油分が固着してドロドロになります。
仕舞う時には、他の物が濡れてないことを確認しましょう。←結構やりがち
毎日のように使うフライパンだったら、いちいち使い終わりに油を塗らなくても平気です。
肉を焼くときだけ餃子を焼くときだけしか使わないなら、油を薄く塗っておきましょう。
・窒化加工:汚れがなかったらタワシのみ、結構汚れてたら洗剤で洗って平気です。洗い終わったら布巾でふいて終わり。
・シリコン:キレイに洗って布巾でふきましょう。このときシリコンが剥がれてる部分があったら薄く油を塗ってください。
・鋳物 :基本作業は黒皮鉄と一緒です。鋳物は油馴染みが遅めなので、使用後は油を薄く塗りましょう。
注意点 基本的にフライパンは料理を作るものであって、保存容器じゃないです。
作った料理を放置すると、孔食といって腐食してしまう場合があります。クレーターみたいになる部分が出来ます。
料理を作り終わったら食卓に出して、さっさと洗うようにしましょう。
コゲが残ったときは、水をたして茹でてみてください。フヤケて落ちやすくなります。
どうしても残るようなら火にかけてコゲが炭になるくらい熱してあげて、ヘラで落としましょう。
ここでも金属製のタワシはダメですよ!!
あと、よくある質問で食洗機に入れられますか?と聞かれますが、フライパンくらいは手洗いしてくださいね。
なんとなくわかりましたか?
テレビやネットを見ていると色んな事が書かれていますが、僕も店頭に立って説明していると
みんな間違った先入観のまま鉄のフライパンを買ってるんだな〜って感じています。
今回の内容で少しでも鉄フライパンに対するイメージが良くなればと思います。
鉄は怖くない怖くないコワクナイ